うなぎ no たまご

45歳でキャリアウーマンを捨てて、女将を目指す

見たことない世界

面接。相手は代表取締役 本人。

 

お茶を出す人も、代表取締役

以前、赤坂の料亭からお断りの電話がかかってきた時も、オーナー本人だった。

 

飲食店業界で最も重要視されるスキルといえば、接客の経験だけ。アルバイトでもなんでも、未経験OK!というセリフは嘘。あるいは、よほどマンパワーが不足している状況であれば採用するのかもしれないけれど。

私のようなエクセルやワードを使います!とか、電話応対しながらタイピングも可能です!とか言っても、ここでは全く通用しない。異業種からの転職は、違う文化の人が対話をしているに近い。まったく相手にされない。ましてや、45歳…転職のデッドラインギリギリ…

 

どんなに早くタイピングができても

人前で説得力のあるプレゼンができるか?という能力も問われない。

はぁぁぁぁ~

置いてきた履歴書を、取り戻したい気持ちにかられる。

 

採用の判断は少しお時間をください。後日、こちらから連絡します。

何か質問はありますか?

 

こういうときは、気になることは聞いておく主義。

 

今回の採用は、年齢制限は特にないのでしょうか?

 

やっぱり、ココ ↑ 大事。かなり…

 

今回の求人は、若い方はお断りしているんです。

管理職と同様の立場になりますので…

 

まず デッドラインは、クリア~

 

外に出ると雨が上がっていた。

どこからか鰻のたれの香ばしい香りに包まれる。

ん~いい匂い。お腹すいた、朝からなんにも食べてないし。そういえば、うなぎのたまごって、見たことない。そんな疑問が、ふっとよぎった。

 

#転職

たまごになりたい・・・

ここは、新橋の路地裏。

日本の最高峰、〇兆本店や金〇中…敷居の高い料亭が立ち並ぶ…

 

鞄は、ノーブランド。中には今月2通目の履歴書。

証明写真は、あわてて駅のアレで格闘して撮影。なんといっても、面接までこぎつけるだけ、幸運なのだから。

 

カルガモのお引越しで有名なオフィス街での財団法人勤務から始まり、全国を飛び回る設計事務所に勤務するも社長の愛人女デザイナーから嫌われて、更新契約でまさかの年収を大幅にカット。たどり着いた今の職場は、まさかの財団法人。

公務員でもない財団法人という団体は、どこもだいたい共通。オウンルールでガチガチ、しかもやることはアナログ。名だたる大企業からの出向の集団で、居場所がなく流されてきたのではないか?オーラでゆらゆらしている人ばかり。とはいえ、自分も社会人として、いろいろな立場の人と一緒に仕事をしてきた。そんな、他人から見ればおばさん扱いされる自分が、たどり着いた結論。

 

人生の最後までまっとうできる仕事につく。

今、その面接に向かう途中。すれ違う芸者さんが、大事そうに三味線を抱えて道を急いでいる。バケツをひっくり返したような土砂降りの夜だった。